Gamma-Ray Bursts (GRBs) are the most powerful explosions in the universe, detectable from large distances and useful for measuring cosmic expansion. Their utility is based on correlations like the Dainotti relation, which connects a GRB’s afterglow luminosity with its duration. Challenges in data collection from observatories such as the Neil Gehrels Swift Observatory arise from incomplete data and temporal gaps caused by instrumental issues. This research [1] proposes a machine learning approach for Light Curve Reconstruction (LCR) to fill in these gaps, continuing previous efforts by some of us [2] in improving the accuracy of key parameters: log Ta (end time of plateau emission), log Fa (flux at the end of the plateau), and alpha (decay slope of the light curve after the plateau).
The research team analyzed a dataset of 521 Gamma-Ray Bursts (GRBs) from the Swift BAT-XRT repository, testing nine machine learning (ML) and deep learning (DL) models against the standard Willingale (W07) model. The models evaluated included Multi-Layer Perceptron (MLP), Attention U-Net, Bi-Mamba, Bidirectional Long Short-Term Memory (Bi-LSTM), Kolmogorov-Arnold Networks (KANs), Conditional GAN (CGAN), Gaussian Process–Random Forest Hybrid (GP-RF), SARIMAX-based Kalman Filter, and Fourier Transform. They were assessed based on accuracy, measured by the lowest 5-fold cross-validation Mean Squared Error (MSE), and precision, determined by the reduction in uncertainty of parameters log Ta, log Fa, and alpha. The MLP and Attention U-Net models were identified as the top performers as shown in the model performance table. Additionally, the reconstruction figure shows the reconstructions produced by the MLP and the Attention U-Net models.
This study, published in November 2025 in The Astrophysical Journal, introduces a validated toolkit for the astrophysics community with several implications.
For Cosmology: The study enhances the Dainotti relation by decreasing uncertainties in log Ta and log Fa by over 38 percent, improving the use of GRBs as standard candles for measuring the expansion of the universe.
For Astrophysics: The reduction of uncertainty in the post-plateau slope, alpha, by more than 41 percent allows more rigorous testing of GRB theoretical models such as the fireball model.
For Future Missions: This framework is adaptable for analyzing data from future missions like SVOM, Einstein Probe, and THESEUS, extending its applicability across data from various wavelengths.


References:
[1] Manchanda, A., Kaushal, A., Dainotti, M. G., Gupta, K., Deepu, A., Naqi, S., Felix, J., Indoriya, N., Magesh, S. P., Gupta, H., et al., 2025, ApJS, 281(2), 35.
[2] Dainotti, M. G., Sharma, R., Narendra, A., et al., 2023, ApJS, 267(2), 42.
ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)の観測によって、宇宙誕生から間もない時代に、1,000 km/sを超える高速度成分をもつ強い水素輝線(Hα輝線)を放つ天体(=高速度Hα輝線放射天体)が数多く見つかっています。これらの多くは非常に小さく、赤い色を示す「Little Red Dots(LRD)」と呼ばれる天体で、近傍宇宙ではほとんど見られない新しい種類の天体です。
高速度のHα輝線は、銀河中心の超巨大ブラックホールの周囲で物質が高速で運動することで生じる「活動銀河中心核(Active Galactic Nuclei; AGN)」からの放射の特徴と一致するため、これらの天体の発見は「初期宇宙には予想以上に多くのAGNが存在し、超巨大ブラックホールが急速に成長していた可能性がある」という考えを強く後押ししてきました。しかし一方で、「これらの天体が本当にAGNなのか」という決定的な証拠は、これまで得られていませんでした。
国立天文台科学研究部の小久保充特任助教(国立天文台フェロー)と東京大学宇宙線研究所の播金優一助教の研究チームは、これらの天体が本当に超巨大ブラックホールを持つAGNなのかを確かめるため、JWSTの赤外線カメラによる複数回の撮像観測データと、Chandra X線衛星による極めて深いX線観測データを組み合わせ、AGNであれば必ず見られるはずの観測的特徴を探りました。もしこれらの天体がAGNであるのなら、超巨大ブラックホールへと降着する物質によって形成される降着円盤からの紫外-可視光が短い時間で明るさを変える様子や、降着円盤内縁部からの強いX線放射が観測されるはずです。
しかし解析の結果、対象とした5天体すべての高速度Hα輝線放射天体において、紫外~可視光に相当する波長域での明るさの変化はまったく検出されませんでした。さらに、一般的なAGNでは必ず観測されるX線放射も検出されませんでした。
これらの結果は、観測された天体が通常のAGNとは大きく異なる性質をもつことを示しています。従来のAGNモデルでは説明が難しく、別の物理的な仕組みが働いている可能性が浮かび上がってきました。本研究では、激しい星形成が生み出す高速ガス流や、星からの紫外線が周囲の水素ガスで散乱されることで見かけ上速度の大きいHα輝線成分が生じる、といった代替シナリオを提案しています。
今回の成果は、宇宙初期における超巨大ブラックホールと銀河の成長の関係、そして高赤方偏移宇宙におけるAGNの普遍性について、これまでの理解を根本から見直す必要があることを示唆しています。今後、より詳細な分光観測、多波長での追観測、理論モデルの高度化などを通じて、これらの謎の天体の正体解明が進むことが期待されます。

論文情報
タイトル:Challenging the Active Galactic Nucleus Scenario for JWST/NIRSpec Little Red Dot and Non-Little Red Dot Broad Hα Emitters in Light of Nondetection of NIRCam Photometric Variability and X-Ray
著者:Mitsuru Kokubo, Yuichi Harikane
掲載誌:The Astrophysical Journal
DOI:10.3847/1538-4357/ae119e
URL:https://iopscience.iop.org/article/10.3847/1538-4357/ae119e
私たちの住む太陽系や太陽系外惑星はどのようにして作られたのでしょうか。これまでの研究で、惑星は「原始惑星系円盤」と呼ばれる、若い星をとりまく天体で作られることが知られていますが、その詳しいプロセスは謎に包まれています。
原始惑星系円盤の中で惑星が作られるプロセスにおいて、重要な役割を果たすかもしれないと考えられてきたのが渦巻き状の構造です。これは、原始惑星系円盤自身の重みによってできるものです。渦巻きの中では固体微粒子の合体が効率的に進行し、最終的には惑星の大きさまで成長する可能性があるほか、渦巻き自体が分裂し直接的に惑星となるかもしれません。一方、よく似た形状の渦巻きは、誕⽣した直後の重たい惑星によっても作られることが知られています。つまり、渦巻きの存在だけからでは惑星が⽣まれる直前か直後かの区別をつけることが難しいのです。
国立天文台科学研究部/総合研究大学院大学の大学院生吉田有宏氏が率いる国際研究チームは、この二つの説が、渦巻きの動き方によって切り分けることができるという理論的な予測に着目しました。渦巻きが原始惑星系円盤自身の重みによってできている惑星形成前夜の場合、渦巻きは巻き付くように動き、やがては消えるはずです。一方で、渦巻きがすでに作られた惑星によってできている場合には、渦巻きはその形を保ったまま惑星とともに回転を続けるでしょう。
研究チームが今回着目したのは渦巻きを持つおおかみ座IM星周りの原始惑星系円盤です。研究チームは、アルマ望遠鏡によって2017年、2019年、2024年に取得された7年間にわたる4回の観測で得られた原始惑星系円盤の画像をつなげることで「動画」を作成しました。その結果、渦巻きは巻き付くようなダイナミックな動きを示していることがわかりました。これは、渦巻きが原始惑星系円盤自身の重みによってできているということを意味します。このような渦巻きは、惑星の誕生を促進する役割がありますから、この原始惑星系円盤はまさに惑星形成の直前–天地開闢前夜–にあると考えられます。
この研究成果は Tomohiro C. Yoshida et al. “Winding Motion of Spirals in a Gravitationally Unstable Protoplanetary Disk” として Nature Astronomy誌 に2025年9月24日付けで掲載されました。
https://www.nature.com/articles/s41550-025-02639-y
国立天文台アルマプロジェクトからのプレスリリース:
https://alma-telescope.jp/news/press/vimage-202509.html
私たちは、最も近い高密度星団形成領域である ヘビ使い座A領域 において、ALMA(アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計)とJWST(ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡)の高解像度観測データを駆使し、この領域の星形成活動の全貌を新たに明らかにしました。最も注目すべき発見は、7つの惑星質量天体 の存在です。そのうち3つは近赤外線点源を伴い、非常に若い浮遊惑星もしくは褐色矮星である可能性が高いと考えられます(図1のALMA OphA 3/4/5)。これらの天体の質量は、木星質量の10倍程度と非常に小さいことが予備的な解析から推測されています。残る4つは赤外線点源を持たない高密度コアで、将来的には浮遊惑星や褐色矮星へと進化する可能性があります(図2のPSS OphA 1/2/3/4)。特筆すべきは、これらの高密度コアが、三重連星系 VLA1623-2417 から伸びるフィンガー状構造 につながっている点です(図2の中央下のパネル)。このことは、惑星質量天体が原始星系から放出された可能性を示唆し、形成と放出の新しいメカニズムを考える手がかりとなります。さらに、ALMAとJWSTの観測を組み合わせることで、新たな原始星アウトフロー・ジェットの同定、HII領域シェル表面でのMHD波由来の縞模様の発見、HII領域からの暖かいガス流の可視化など、これまで知られていなかった多様な構造も明らかになりました。
発表論文
Fumitaka Nakamura , Ryohei Kawabe , Shuo Huang , Kazuya Saigo , Naomi Hirano , Shigehisa Takakuwa , Takeshi Kamazaki , Motohide Tamura , James Di Francesco , Rachel Friesen , Kazunari Iwasaki , and Chihomi Hara:
“Unveiling Stellar Feedback and Cloud Structure in the Rho Ophiuchi A Region with ALMA and JWST: Discovery of Substellar Cores, C18O Striations, and Protostellar Outflows”
The Astrophysical Journal 掲載予定
https://arxiv.org/abs/2509.01122


For decades, formation of high-mass stars exceeding 8 solar masses has remained one of astronomy’s greatest mysteries. In a recent study published in Astronomy & Astrophysics, a global team of astronomers, including researchers from Yunnan University, Shanghai Astronomical Observatory and Division of Science of NAOJ, has carried out cutting-edge observations toward a “hub-filament system” (HFS) molecular cloud—a cradle of high-mass star formation, and has uncovered stunning new evidence that challenges current theories and illuminates the multi-scale, dynamical nature of high-mass stellar birth.

Using the world’s most advanced (sub)millimeter interferometer, ALMA, the research team conducted ~3000AU resolution observations at the 1.3mm wavelength toward the HFS I18308 cloud, a high star-forming region with a textbook example of HFS morphologies (left panel, Figure 1). The team revealed dual fragmentation modes. Two hub-composing filaments (F1 and F2) exhibit a cylinder-like fragmentation mode, with the quasi-periodic core spacings regulated by the turbulence-dominated fragmentation mechanism. In contrast, the central hub clump shows a spherical-like fragmentation mode, with the core spacings regulated by gravity-dominated Jeans fragmentation mechanism. These findings challenge models predicting a single fragmentation mode across all density scales within molecular clouds (e.g., the global gravitational collapse model).
Moreover, the team did not find high-mass prestellar cores surpassing 30 solar masses; and instead all relatively low-mass cores show a systematic increase in mass and density with evolution. These observed facts support a multi-scale accretion scenario: low-mass prestellar cores form via Jeans fragmentation in the hub, collapse into intermediate-mass protostars, and grow into high-mass stars through hierarchical mass accretion from the filaments, hub clump, and cores (right panel, Figure 1).
Article Information
L. M. Zhen, H-L. Liu, X. Lu, Y. Cheng, R. Galván-Madrid, H. B. Liu, P. Sanhueza, T. Liu, D. T. Yang, F. Nakamura, S. H. Jiao, L. Chen, Y. Q. Guo, S. Y. Feng, Q. Zhang, X. C. Liu, K. Wang, Q. L. Gu, Q. Y. Luo, Y. Lin, P. S. Li, S. H. Li, K. Tanaka , A. E. Guzmán, “Hierarchical fragmentation in HFS I18308 observed as part of the INFANT survey”, Astronomy & Astrophysics, 2025, 70, A47.
https://doi.org/10.1051/0004-6361/202554634
Corresponding Authors: Y. Cheng, H-L. Liu, X. Lu
ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)とアルマ望遠鏡(ALMA)を駆使した観測によって、ビッグバンからわずか約9億年後の宇宙で、15個以上の星団が密集する“ぶどうの房”のような構造をもつ銀河が発見されました。この観測は、重力レンズ効果を活用することでかつてない高解像度と高感度を実現し、これまでの理論やシミュレーションでは予測されていなかった初期銀河の姿を明らかにしました。銀河誕生・進化の理解に新たな視点をもたらす発見です。

対象となったのは、銀河団RXCJ0600-2007の重力レンズ効果により拡大された暗く若い銀河。JWSTとALMAによる計100時間以上に及ぶフォローアップ観測により、10パーセク(約30光年)という極めて高い空間解像度で、銀河内部に無数のコンパクトな星団が集まりながらも、なめらかに銀河全体で回転している様子が鮮明に捉えられました。この銀河は、大きさや質量、化学組成、星形成率などの基本的な性質は当時の平均的な銀河と一致しており、同様の“ぶどう状構造”をもつ銀河が他にも多く存在する可能性が示唆されました。
注目すべきは、このような内部構造が、これまでの観測や数値シミュレーションではほとんど再現されてこなかった点です。現在の理論では、回転銀河は比較的滑らかな構造をとると考えられており、このような“粒々した銀河”の発見は、銀河内部でのエネルギーの放射(超新星爆発・ブラックホール等)とそれに伴う星形成のメカニズムに対する理解が刷新される可能性を示しています。
研究代表の藤本征史助教授(トロント大学)は、「私たちが世界をどう見て、認識するかは、文字通り“見る”力に制限されます。今回、かつてない感度と解像度の実現により予想していなかった深宇宙の描像が明らかになってきました。これは、今後の理論研究や望遠鏡開発に新たな目標を与える発見です」と語ります。また、研究メンバーで国立天文台の大内正己教授は、「私たちが住んでいる天の川銀河をはじめ、現在の宇宙には円盤形や楕円形の整った形の銀河が一般的なことを考えると、初期の銀河が”宇宙ぶどう”のように粒々になっていたのは驚きです。理論で予測されていなかったこのような初期の宇宙の姿は、私たちの想像を超えていました。今後もさらに観測研究を進めて初期宇宙の姿を明らかにしていくことが楽しみです。」と加えています。将来的には、次世代の大型地上望遠鏡や宇宙望遠鏡を用いて、多くの“宇宙ぶどう”のような構造を持つ銀河の探索が進むことが期待されます。
本成果はNature Astronomy誌に2025年8月7日付で出版されました。
関連画像:
JWSTとALMAによる銀河の高解像度画像では、コンパクトな星団が集まり“ぶどうの房”のような構造をなしている様子が確認されました。左画像は星の光、右画像はガスの速度分布を示しており、ガスが回転運動していることを表しています。


発表者
藤本 征史(トロント大学 天文学・天体物理学科 助教授)
大内 正己(国立天文台科学研究部 教授 / 東京大学宇宙線研究所 教授)
河野 孝太郎(東京大学天文学教育研究センター 教授・センター長)
共同発表機関
トロント大学 ダンラップ観測所
東京大学宇宙線研究所
東京大学大学院理学系研究科
アメリカ国立電波天文台
テキサス大学オースティン校
ダーラム大学
発表論文
Fujimoto et al. “Primordial Rotating Disk Composed of ≥15 Dense Star-Forming Clumps at Cosmic Dawn”
掲載誌:Nature Astronomy(2025年8月7日出版)
DOI: 10.1038/s41550-025-02592-w
関連リンク
東京大学宇宙線研究所 https://www.icrr.u-tokyo.ac.jp/news/16747/

大規模な可視光観測のデータを解析することで、11個の超巨大ブラックホールが集中した宇宙最大級の領域が発見されました。これほど密集した超巨大ブラックホールの集団が発見されたのは初めてのことです。すばる望遠鏡を用いた追観測やさらなるデータ解析から、この領域は2つの銀河集団の中間に位置しており、中性ガスと電離ガスの境界であることが明らかになりました。超巨大ブラックホールが、「どこで」、「どのように」成長するかという過程の理解に大いに資する発見です。
誕生から数十億年の初期宇宙には、周囲のガスを大量かつ活発に取り込むことで超巨大ブラックホールが極めて明るく輝く「クエーサー」が多数存在していました。クエーサー間の距離は、最もクエーサーが多かった時代でも通常は数億光年程度です。今回、国立天文台の研究者が率いる研究チームは、スローン・デジタル・スカイサーベイという大規模な可視光観測プロジェクトによって得られたデータの解析から、くじら座方向の約108億年前の宇宙の差し渡し4000万光年の範囲に、11個のクエーサーが密集する領域を見つけました。宇宙最大級の密集で、これほどの密集が偶然に生じる確率はとてつもなく低く、これらのクエーサーは集団で形成され活性化されているものと推定されます。この領域を調べることはクエーサーの活動、すなわち超巨大ブラックホールの成長の謎を解明することに直結します。
研究チームは、すばる望遠鏡の超広視野主焦点カメラHSCを用いてこの領域を追観測しました。HSCの高い感度と視野の広さを生かし、密集するクエーサーを取り巻く数百個の若い銀河の分布を描き出しました。一般に、銀河の衝突や合体がクエーサーの活動を促進すると考えられていますが、今回発見したクエーサーが密集する領域は、銀河が最も集まっている場所ではなく、2つの銀河集団のちょうど中間に位置していました。さらにデータ解析から、これらの集団を取り巻くガスの分布を調べました。その結果、密集するクエーサーは、ガス密度が中間的な、中性ガスと電離ガスの境界領域に位置することが判明したのです。
研究チームを率いる国立天文台ハワイ観測所のリャン・ヨンミン特任研究員は、「我々は、クエーサーが宇宙の状態が変わる“縁”に沿って分布していることに気づきました。これは、クエーサーが放つ強い光が周囲のガスの状態を変えていること、そして同時に、作られつつある巨大構造、例えば銀河団の種をトレースしている可能性を示しています」と語っています。研究チームはこの構造を、2つの大陸が衝突して形成されたヒマラヤ山脈になぞらえて、「宇宙のヒマラヤ」と呼んでいます。
研究チームは今後、共同利用が始まったすばる望遠鏡の超広視野多天体分光器(Prime Focus Spectrograph, PFS)などによる観測を通じて、超巨大ブラックホールの成長史を解き明かしていくことを目指しています。

詳細記事
宇宙最大級の超巨大ブラックホールの集団を発見:宇宙の物質分布に新たな謎を投げかける(すばる望遠鏡)
https://subarutelescope.org/jp/results/2025/06/02/3558.html
発表者
梁 永明(リャン・ヨンミン) (国立天文台ハワイ観測所特任研究員)
大内正己(国立天文台 科学研究部 教授/東京大学 宇宙線研究所 教授 )
共同発表機関
自然科学研究機構 国立天文台
東京大学宇宙線研究所
カリフォルニア大学サンタクルーズ校
発表論文
Liang et al. “Cosmic Himalayas: The Highest Quasar Density Peak Identified in a 10,000 deg 2 Sky with Spatial Discrepancies between Galaxies, Quasars, and IGM HI” in Astrophysical Journal
https://iopscience.iop.org/article/10.3847/1538-4357/adc1bb
関連リンク
東京大学宇宙線研究所
https://www.icrr.u-tokyo.ac.jp/news/16553/
我々の住む宇宙は宇宙線と呼ばれる高エネルギーの陽子や原子核で満たされています。しかし、それらがどこで、どのように加速されているのかはまだよくわかっていません。過去に発生した超新星爆発の名残である超新星残骸が最も有力な宇宙線加速場所の候補であり、超新星爆発の際に放出された物質と星間ガスが衝突して生じる衝撃波で宇宙線が加速されると考えられています。近年の超新星爆発の観測から、超新星爆発の際には周囲に非常に濃い星周物質が存在することが明らかとなりました。この星周物質と爆発の際に放出された物質が衝突して衝撃波を形成し、そこで宇宙線が加速されると、宇宙線が濃い星周物質と衝突してガンマ線やニュートリノを生成します。これらのガンマ線やニュートリノを観測することができれば、宇宙線の加速場所や加速機構を明らかにできる可能性があります。東北大学学際科学フロンティア研究所の木村准教授と国立天文台の守屋助教の研究チームは、超新星爆発が濃い星周物質と相互作用した際に生じるニュートリノ・ガンマ線放射を新たな手法で計算し、2023年に近傍銀河で発生した超新星爆発、SN 2023ixf へと適用することで宇宙線の生成効率に関して制限をつけることに成功しました。研究チームはSN 2023ixfの可視光の観測データと一致する星周物質や超新星爆発の放出物質の構造を輻射流体シミュレーションを用いて求め、そのシミュレーションデータを用いてガンマ線・ニュートリノ放射を計算する手法を構築しました。その手法でニュートリノ・ガンマ線放射を計算した結果、宇宙線の生成効率が10%以上の場合には現状のガンマ線望遠鏡で未検出であったデータと矛盾してしまうことがわかりました。今後、この手法を複数の超新星爆発に適用することで衝撃波における宇宙線の生成効率を明らかにできると期待されます。本研究結果は天文学の専門誌 The Astrophysical Journal に2025年5月2日付で掲載されました。

論文情報
タイトル:High-energy gamma-ray and neutrino emissions from interacting supernovae based on radiation hydrodynamic simulations: a case of SN 2023ixf
著者:Shigeo S. Kimura, Takashi J. Moriya
掲載誌:The Astrophysical Journal
DOI:10.3847/1538-4357/adc716
URL:https://iopscience.iop.org/article/10.3847/1538-4357/adc716
東北大学からのプレスリリース (2025/5/12):https://www.fris.tohoku.ac.jp/feature/topics/detail—id-1557.html
我々の宇宙を記述する最も基本的な枠組みである素粒子物理学の標準模型によると、ニュートリノには電子型・ミュー型・タウ型の3つの種類が存在します。それでは、もし人類がまだ見たことのない第4のニュートリノ(ステライル・ニュートリノ)が存在した場合、いったい何が起こるでしょうか。近年の素粒子実験により、地球上の原子炉から放出される反ニュートリノの個数が理論予言よりわずかに小さいという報告がなされています。ステライル・ニュートリノがもし存在した場合この異常を説明することができるため、この粒子は注目を集めています。もしステライル・ニュートリノが存在した場合、それはニュートリノ振動を介して超新星の過程でも出現しうるため、天文観測によりその兆候をとらえることができるかもしれません。
そこで国立天文台科学研究部の森寛治研究員(日本学術振興会特別研究員)、滝脇知也准教授、郡和範教授、長倉洋樹特任助教(国立天文台フェロー)は、電子型ニュートリノとステライル・ニュートリノの間の振動を考慮した2次元超新星爆発シミュレーションを実現することにより、超新星爆発に対するステライル・ニュートリノの影響を見積もりました。その結果、ステライル・ニュートリノと電子型ニュートリノの混合角が大きい場合、電子型ニュートリノのフラックスが減少するため、超新星爆発が失敗することがあることが分かりました。一方で実際の宇宙では超新星は爆発しているため、こうしたモデルは観測と矛盾します。したがって、超新星の爆発可能性に基づいてステライル・ニュートリノの性質を制約できる可能性が明らかになりました。今後はシミュレーションのセットアップに対する依存性を系統的に調べていくことにより、より精密な制限を目指していきたいと考えています。
本研究の成果は米国物理学会の『フィジカル・レヴュー・D』誌より出版されました。

【論文情報】
雑誌: Physical Review D 題名: “Core-collapse supernova explosions hindered by eV-mass sterile neutrinos” 著者: Kanji Mori, Tomoya Takiwaki, Kazunori Kohri, Hiroki Nagakura URL: https://journals.aps.org/prd/abstract/10.1103/PhysRevD.111.083046

超新星爆発は太陽の約10倍より重い大質量星がその一生の最後に引き起こす大爆発です。超新星爆発は星の内部で作られた元素を星間空間にまき散らし、宇宙の物質進化を駆動します。したがって、我々の宇宙を構成する物質の起源を理解するためには、超新星爆発のメカニズムを解明することが必要不可欠です。
超新星の爆発メカニズムにおいては、ニュートリノと呼ばれる素粒子が重要な役割を担うことが知られています。自然界には3種類のニュートリノが存在し、空間を伝播する過程で互いに入れ替わることがあります。この現象はニュートリノ振動と呼ばれ、この現象を実験的に発見した梶田隆章氏、Arthur McDonald氏に対して2015年のノーベル物理学賞が授与されました。近年の理論的研究によると、超新星内部のような極限的な高密度環境ではニュートリノどうしの自己相互作用によって特殊なニュートリノ振動(集団振動)が発生し、超新星爆発のメカニズムに大きな影響を与える可能性があります。ところが、集団振動を第一原理的に取り扱う手法は計算量が大きいため、これを考慮した3次元超新星爆発シミュレーションはこれまで実現されてきませんでした。
そこで国立天文台科学研究部の森寛治研究員(日本学術振興会特別研究員)と滝脇知也准教授を含む研究グループは、ニュートリノ集団振動を現象論的に取り扱う手法を採用することにより、集団振動を考慮した3次元超新星爆発シミュレーションを実現しました。計算の結果、物質の加熱に寄与する電子型反ニュートリノのエネルギーが従来の超新星モデルより大きくなるため、超新星の爆発エネルギーが従来の予言に比べて数倍から10倍程度増大することを明らかにしました。一方、ニュートリノ振動を考慮しない従来の多次元超新星シミュレーションでは、実際に観測されている超新星イベントよりも爆発エネルギーが小さくなってしまうという問題が指摘されてきました。本研究は超新星物理学上の十年来の問題であったこの「爆発エネルギー不足問題」が、ニュートリノ振動により解決されうることを明らかにしました。今後はニュートリノ振動をより精密に取り扱う手法を探究するとともに、様々な親星モデルや星の回転等を考慮した同様のシミュレーションを実行していくことで、超新星爆発機構に対するニュートリノ振動のインパクトの全貌を明らかにしていきたいと考えています。
本研究の成果は『日本天文学会欧文研究報告』より出版されました。筆頭著者の森は、本研究の成果に対して宇宙核物理連絡協議会若手奨励賞を受賞しました。
https://www.cns.s.u-tokyo.ac.jp/ukakuren/indexnew.html
また、本論文中の図は、『日本天文学会欧文研究報告』Volume 77, Issue 2の表紙に選ばれました。
https://academic.oup.com/pasj/issue/77/2
【論文情報】
雑誌: Publications of the Astronomical Society of Japan
題名: “Three-dimensional core-collapse supernova models with phenomenological treatment of neutrino flavor conversions”
著者: Kanji Mori, Tomoya Takiwaki, Kei Kotake, Shunsaku Horiuchi
URL: https://academic.oup.com/pasj/article-abstract/77/2/L9/8081678







