太陽系外惑星(以下、系外惑星)の大気中には光化学によって生成される”もや”(ヘイズ)が普遍的に存在することが示唆されています。ヘイズは土星の衛星タイタンや冥王星の大気にも存在しており、大気化学過程や惑星気候への影響を調べる上でもヘイズの形成プロセスを理解することは重要です。従来、系外惑星は高温環境であることから、ヘイズは煤のような”黒い“物質でできていると考えられていました。ところが、近年のJWSTによる大気観測では、複数の系外惑星でヘイズが”白い“物質で構成されている可能性が示唆されており、従来の予想に対して疑問を投げかけています。
今回、国立天文台科学研究部の大野和正特任助教は、ヘイズの構成物質組成の進化を考慮した新たなヘイズ形成の理論モデルを考案し、系外惑星のヘイズがどのような物質で構成されているのかを調べました。その結果、従来予想されていた煤のような物質は系外惑星大気では析出せず、代わりにダイアモンドという想定すらされていなかった物質が大気中で形成される可能性が示されました。これは、系外惑星の高温で水素に富んだ大気が、工学分野で広く採用されている化学吸着法によるダイアモンドの低圧合成環境に酷似していることに起因しています。今後は系外惑星の大気観測や、系外惑星大気を模擬した室内実験でダイアモンド合成が実際に起きるか検証することで、系外惑星のヘイズの正体に迫れると期待されます。この研究成果は “Photochemical Hazes in Exoplanetary Skies with Diamonds: Microphysical Modeling of Haze Composition Evolution via Chemical Vapor Deposition”として、米国の天文学専門誌『アストロフィジカル・ジャーナル』に2024年12月12日付で掲載されました。
https://iopscience.iop.org/article/10.3847/1538-4357/ad8e67