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研究課題

国立天文台科学研究部・天文シミュレーションプロジェクトで行なわれている研究内容は多岐に渡り,現在の天文学・宇宙物理学の相当な範囲をカバーしている.ここでは一部のみしか紹介できない.これ以外にも様々な分野の研究が行われており,日本最大級の研究グループの特徴を生かした分野間交流も盛んに行なわれている.

このページの記述は日本における天文学・宇宙物理学の理論的研究 第8号 に基づいている.少し古い情報も多いので,内容は参考程度に止めること.

星惑星形成

惑星系形成(小久保)

太陽系は惑星、衛星、環、小惑星、太陽系外縁天体、彗星と、質量・組成・軌道の違う多様な天体から構成されている。これらの天体はどのようにして形成されたのだろうか。また、近年、観測によって銀河系には太陽系以外にも多様な惑星系が存在することが明らかになっている。これらの惑星系は太陽系とは何が違ったのだろうか。惑星系は原始惑星系円盤とよばれる星周円盤から形成される。原始惑星系円盤から惑星系までの形成過程を理論的に明らかにし、多様な惑星系の起源を描き出すことを目指す。現在は微惑星形成、地球型惑星形成、ガス惑星核の形成、惑星環の構造などについて研究を進めている。

星形成(富阪)

星は様々な階層の天体を形成する最も基本的な要素であり、その形成過程の理解は天体物理学の基本的問題の一つである。この過程では重力が重要な役割を果たすが、星間乱流、磁場、原子・分子過程、輻射が絡み 合った複雑な系である。これらの素過程を取り入れた 磁気流体力学、輻射磁気流体力学の非定常シミュレー ションをおこない、乱流、磁場、回転等の役割を明らかにすることを目指している。またシミュレーションと観測を比較する手法や、高精度、高速のシミュレー ション手法の開発等にも注力している。

惑星形成(片岡)

惑星形成は、ミクロンサイズのダストが互いに衝突・付着し、最終的に数千キロメートルもの惑星へと成長する過程である。特に近年、ALMA望遠鏡等の天文観測の飛躍的進歩により、原始星の周囲に存在する原始惑星系円盤が詳細に観測され、惑星形成の環境が明らかとなってきた。その結果、原始惑星系円盤はリング・ギャップといった複雑な構造を持つことが明らかとなってきた。更には、ミリ波偏光からダストサイズが100ミクロン程度であることも明らかとなった。このような環境下で惑星は形成可能なのだろうか?我々はこのような天文観測の情報に留意しながらダスト成長の素過程を解き明かすべく、理論・観測の両面から研究を進めている。

超新星爆発・中性子星

重力崩壊型超新星の爆発メカニズムの解明 (滝脇)

超新星爆発の中心部のシミュレーションの様子.密度に対して温度が高い領域を赤や黄色で低い領域を青や黒で描いている.モデルはTakiwaki+2016から

重力崩壊型超新星は太陽質量の約10 倍を超える大質量星がその進化の最終段階に示す大爆発現象である。 パルサー、マグネター,ブラックホールといったコン パクト天体の形成過程そのものであり、ニュートリノ 反応や原子核反応を司る高エネルギー物理学の宇宙に おける実験場となっている。星の持つ、質量、自転、磁場といった量が、星の一生にどのように影響し、超新星やガンマ線バーストといったどのような最期に結びつくのかは恒星進化の大問題である。

近年では京コ ンピュターや天文台の並列計算機によって非常に大規模な数値シミュレーションが可能になったため、急速 にそのメカニズムの解明が進んでおり、一般相対性理論や詳細なニュートリノ反応を取り入れた精密科学に なりつつある。超新星のもっとも基本的な爆発メカニズムはニュートリノ加熱によるため,ニュ-トリノの輻射輸送計算をどのように解くのかは最重要課題である.国立天文台では第一原理的なボルツマン方程式を近似したM1スキーム,もしくはIDSAスキームでこの問題に挑んでいる.

重力崩壊型超新星爆発を使ったマルチメッセンジャー天文学 (滝脇)

ニュートリノ,重力波,光のライトカ-ブ.詳しくはNakamura et al. 2016を参照のこと.

重力崩壊型超新星爆発は星の表面で起こる光の放射の前にニュートリノや重力波を放出する.多波長の光の他にニュートリノや重力波を用いて重力崩壊型超新星爆発の性質を明らかにするのがマルチメッセンジャー天文学である.ここでは特にニュートリノと重力波の重要性を説明する.

超新星1987Aからのニュートリノの検出は,10数という小統計でありながら,革命的な情報をもたらした.まず,重力崩壊型超新星は超巨星の爆発であること,そしてその中心部の鉄のコアが重力崩壊を起こし,ニュートリノを放出することである.これらは理論予言と観測で第ゼロ近似では定量的にも大きな矛盾がなかった.次に近傍で超新星爆発が起こったときに発生するニュートリノバーストを捉えようと,多くの観測機器が準備されている(SK-Gd, Hyper-Kamiokande, IceCube, KamLand, JUNO, DUNE).この大統計観測の時代に備えた理論予言もまた重要になる.

超新星爆発の中心部のシミュレーションは,強い乱流的な対流や降着衝撃波不安定性といった非球対称的な物質の流れが爆発メカニズムに本質的な影響を与えると示唆した.この非球対称の流れを観測的に確かめるには重力波を使用するのが適切である.なぜなら重力波は4重極的な非球対称的な物質の運動によって生じるためである.近年LIGO-VIRGOグループは多くの連星系の合体の重力波を検出している.そこに日本のKAGRAが加わり,より精度の良い観測が行われようとしている.連星系の次のターゲットとしては超新星爆発からのものが期待されている.

超新星の多様性の起源の研究(守屋)

超新星爆発は明るさや時間スケールにかなり多様性を持っていることが明らかになってきている。また、爆発直後に加えて爆発直前からも超新星爆発が観測されるようになり、爆発直前の星の情報も得られるようになってきた。超新星爆発の多様性は、その親星や熱源の多様性に起因している。超新星爆発の研究を通して星の死の直前の状態を明らかにし、なぜ超新星爆発は多様性に富むのかを恒星進化理論に基づいて検証している。逆に恒星進化理論の予言する星の最期の状態に基づいて、どのような星からどのような超新星爆発が観測されるべきかを明らかにする研究も行っている。いくつかの突発天体サーベイにも関わり、超新星爆発の観測的研究も行なっている。

宇宙論

ビッグバン初期宇宙の研究(梶野)

ビッグバン宇宙開闢直後の真空の相転移、対称性の破れとダークマターを含む素粒子創成、クォーク閉じ込め(QCD)等に伴う高エネルギー素粒子・原子核過程は、その後の宇宙の物理状態の時間発展を大きく左右する。これら初期宇宙の物理過程がビッグバン元素合成、宇宙背景放射ゆらぎ、銀河の構造形成などに及ぼす影響を天体観測や物理実験との比較を通じて実証的に研究し、宇宙進化史を明らかにする研究を行っている。

重力レンズ効果を応用した観測的宇宙論(浜名)

重力レンズ効果は、その主要メカニズムが重力のみで記述されるという単純さにより暗黒物質を研究する強力な手段となっている。また宇宙の構造形成進化を介して、宇宙の暗黒エネルギーの巨視的性質およびニュートリノ質量を探るユニークな手段にもなっている。現在、国立天文台と国内外の研究機関との共同プロジェクトとして、すばる望遠鏡Hyper SuprimeCam survey が行なわれている。これは現在世界最大規模の大規模撮像観測プロジェクトであり、その主目的の一つは重力レンズ効果を応用した観測的宇宙論研究である。こういった背景のもと、重力レンズ効果を応用した高精度宇宙論研究を理論・数値シミュレーション・観測的手法を組み合わせ推進している。

深宇宙観測による銀河形成と観測的宇宙論の研究(大内)

ビッグバンで始まった138 億年の宇宙史の中で,初代星,そして銀河が誕生し,銀河が織りなす大規模構造が出来たと考えられている.このような宇宙の進化を観測で明らかにすることが研究の目標である.本研究室では,すばる望遠鏡やハッブル宇宙望遠鏡といった光学・近赤外線観測を中心に,ALMA やスピッツアー望遠鏡などの多波長観測も行い,赤方偏移0(現在)から赤方偏移11(約134 億年前)の宇宙にある銀河を調べている.暗く検出が難しい銀河には重力レンズの増光効果を利用する一方で,2020年代初めに打ち上げ予定のJWST望遠鏡の観測に携わり,赤方偏移20 の宇宙にまで迫ろうとしている.

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