2020.1.23 articles

星周物質と衝突して光る超新星の多次元輻射流体力学シミュレーション

円盤状星周物質と衝突する超新星

大質量星の爆発である重力崩壊型超新星の中には、周囲に存在するガス(星周物質)と相互作用している観測的徴候を示すものも存在し、II型超新星やIb型超新星(どちらも超新星のスペクトル分類で、水素の吸収線が見られる超新星と水素が見えないがヘリウムが見られる超新星)のサブカテゴリとしてIIn型超新星やIbn型超新星という分類がなされています。また、一部のIIn型超新星は、この星周物質と超新星の噴出物(エジェクタ)との衝突をエネルギー源として、極めて明るく輝くことが知られています(例えばSN 2006gyなど)。しかしながら、そのような星周物質が星の進化の最終段階においてどのように星から供給され、どのように分布しているかはあまりよく分かっていません。一部のIIn型超新星の分光観測や偏光観測からは、星周物質やエジェクタが非等方的に分布している示唆などがあり、非等方な星周物質との衝突で光る超新星の観測的特徴を推測し、観測と詳細に比較することが、星周物質の起源を探る上で重要かもしれないと考えられます。

科学研究部の鈴木昭宏 特任助教 (国立天文台フェロー)、守屋尭 助教、滝脇智也 助教は星周物質と衝突する超新星エジェクタの2次元輻射流体力学シミュレーションを実行し、星周物質を円盤状に分布させた場合の超新星の光度曲線を予想しました。その結果、超新星の光度曲線は見る方向によって様々な形を取り得ることを示し、IIn型超新星をはじめとする星周物質との衝突によって光る超新星の光度曲線の多様性を説明し得ることを指摘しました。今後、スペクトルや偏光度の計算を行ったり、観測との詳細な比較を行うことにより、超新星を取り巻く星周物質の起源に迫ることができると期待されます。本結果は、The Astrophysical Journal誌に発表されています。

2019/01/22

Reference:
Suzuki, A., Moriya, T. J., and Takiwaki, T., The Astrophysical Journal, 880, 150 [ADS] [doi]

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