私たちの住む太陽系や太陽系外惑星はどのようにして作られたのでしょうか。これまでの研究で、惑星は「原始惑星系円盤」と呼ばれる、若い星をとりまく天体で作られることが知られていますが、その詳しいプロセスは謎に包まれています。
原始惑星系円盤の中で惑星が作られるプロセスにおいて、重要な役割を果たすかもしれないと考えられてきたのが渦巻き状の構造です。これは、原始惑星系円盤自身の重みによってできるものです。渦巻きの中では固体微粒子の合体が効率的に進行し、最終的には惑星の大きさまで成長する可能性があるほか、渦巻き自体が分裂し直接的に惑星となるかもしれません。一方、よく似た形状の渦巻きは、誕⽣した直後の重たい惑星によっても作られることが知られています。つまり、渦巻きの存在だけからでは惑星が⽣まれる直前か直後かの区別をつけることが難しいのです。
国立天文台科学研究部/総合研究大学院大学の大学院生吉田有宏氏が率いる国際研究チームは、この二つの説が、渦巻きの動き方によって切り分けることができるという理論的な予測に着目しました。渦巻きが原始惑星系円盤自身の重みによってできている惑星形成前夜の場合、渦巻きは巻き付くように動き、やがては消えるはずです。一方で、渦巻きがすでに作られた惑星によってできている場合には、渦巻きはその形を保ったまま惑星とともに回転を続けるでしょう。
研究チームが今回着目したのは渦巻きを持つおおかみ座IM星周りの原始惑星系円盤です。研究チームは、アルマ望遠鏡によって2017年、2019年、2024年に取得された7年間にわたる4回の観測で得られた原始惑星系円盤の画像をつなげることで「動画」を作成しました。その結果、渦巻きは巻き付くようなダイナミックな動きを示していることがわかりました。これは、渦巻きが原始惑星系円盤自身の重みによってできているということを意味します。このような渦巻きは、惑星の誕生を促進する役割がありますから、この原始惑星系円盤はまさに惑星形成の直前–天地開闢前夜–にあると考えられます。
この研究成果は Tomohiro C. Yoshida et al. “Winding Motion of Spirals in a Gravitationally Unstable Protoplanetary Disk” として Nature Astronomy誌 に2025年9月24日付けで掲載されました。
https://www.nature.com/articles/s41550-025-02639-y
国立天文台アルマプロジェクトからのプレスリリース:
https://alma-telescope.jp/news/press/vimage-202509.html