私たちは、最も近い高密度星団形成領域である ヘビ使い座A領域 において、ALMA(アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計)とJWST(ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡)の高解像度観測データを駆使し、この領域の星形成活動の全貌を新たに明らかにしました。最も注目すべき発見は、7つの惑星質量天体 の存在です。そのうち3つは近赤外線点源を伴い、非常に若い浮遊惑星もしくは褐色矮星である可能性が高いと考えられます(図1のALMA OphA 3/4/5)。これらの天体の質量は、木星質量の10倍程度と非常に小さいことが予備的な解析から推測されています。残る4つは赤外線点源を持たない高密度コアで、将来的には浮遊惑星や褐色矮星へと進化する可能性があります(図2のPSS OphA 1/2/3/4)。特筆すべきは、これらの高密度コアが、三重連星系 VLA1623-2417 から伸びるフィンガー状構造 につながっている点です(図2の中央下のパネル)。このことは、惑星質量天体が原始星系から放出された可能性を示唆し、形成と放出の新しいメカニズムを考える手がかりとなります。さらに、ALMAとJWSTの観測を組み合わせることで、新たな原始星アウトフロー・ジェットの同定、HII領域シェル表面でのMHD波由来の縞模様の発見、HII領域からの暖かいガス流の可視化など、これまで知られていなかった多様な構造も明らかになりました。
発表論文
Fumitaka Nakamura , Ryohei Kawabe , Shuo Huang , Kazuya Saigo , Naomi Hirano , Shigehisa Takakuwa , Takeshi Kamazaki , Motohide Tamura , James Di Francesco , Rachel Friesen , Kazunari Iwasaki , and Chihomi Hara:
“Unveiling Stellar Feedback and Cloud Structure in the Rho Ophiuchi A Region with ALMA and JWST: Discovery of Substellar Cores, C18O Striations, and Protostellar Outflows”
The Astrophysical Journal 掲載予定
https://arxiv.org/abs/2509.01122