国立天文台科学研究部の大内正己教授や冨永望教授、渡辺くりあさん(総研大2年)、中島王彦特任助教、張也弛特別研究員らは、東京大学や筑波大学の研究者と共に129億年から134億年前の宇宙にある3つの銀河(図1と図2)で、炭素と酸素に対して窒素が異常に多いことを明らかにしました。ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の赤外線観測で得られた非常に高い精度のデータを詳しく解析して測定した酸素、炭素に対する窒素の存在比(*)は、現在の太陽系はもとより、私たちの天の川銀河と比べても3倍以上に及びます。このことは、これまで一般的に考えられていた元素の主な供給メカニズム(恒星の内部で元素が作られて超新星爆発で宇宙空間に拡散すること)とは異なるプロセスが初期の宇宙で起こっていることを意味し、ビッグバン直後の宇宙に新たな謎がもたらされました。
詳しくは、以下をご覧ください。
東京大学宇宙線研究所ウェブサイト: https://www.icrr.u-tokyo.ac.jp/news/14554/
筑波大学ウェブサイト: https://www.tsukuba.ac.jp/journal/technology-materials/20231211150000.html
この研究成果は、「JWST Identification of Extremely Low C/N Galaxies with [N/O]>~0.5 at z~6-10 Evidencing the Early CNO-Cycle Enrichment and a Connection with Globular Cluster Formation」として、米国の天体物理学専門誌「アストロフィジカル・ジャーナル」に2023年12月12日付で掲載されました。
著者: 磯部優樹, 大内正己, 冨永望, 渡辺くりあ, 中島王彦, 梅田滉也, 矢島秀伸, 播金優一, 福島肇, XU Yi, 小野宜昭, ZHANG Yechi,
DOI:10.48550/arXiv.2307.00710
URL:https://arxiv.org/abs/2307.00710
(*) 炭素と窒素、酸素ガスの存在比というのは、ガスを構成する炭素と窒素、酸素の原子の個数の比率を意味します。