2023.11.10 研究ハイライト

初期の宇宙で急激に酸素が増加した痕跡を捉える

国立天文台の中島王彦特任助教をはじめとする研究チームは、ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の大規模観測データを用い、宇宙誕生から5億年後にあたる、133億年前の宇宙まで遡り、酸素の存在比(*)を調べました。その結果、宇宙の最初の5〜7億年(131-133億年前)にある銀河の中で、酸素が急激に増えたことを裏付ける証拠を初めて得ることができました。地球や生命に欠かせない酸素が、宇宙の歴史の中でどのように作られてきたのかを明らかにする上で、重要な成果です。 

詳しくは、以下をご覧ください。 

東京大学宇宙線研究所ウェブサイト 

[日] https://www.icrr.u-tokyo.ac.jp/news/14329/

[英]https://www.icrr.u-tokyo.ac.jp/en/news/14330/

NAOJウェブサイト 

[日]https://www.nao.ac.jp/news/science/2023/20231110-dos.html 

[英]https://www.nao.ac.jp/en/news/science/2023/20231110-dos.html 

この研究成果は、Kimihiko Nakajimaらによる論文「JWST Census for the Mass-Metallicity Star Formation Relations at z = 4-10 with Self-consistent Flux Calibration and Proper Metallicity Calibrators」として、米国の天体物理学専門誌「アストロフィジカル・ジャーナル・サプリメントシリーズ」に2023年11月13日付で掲載されます。 

著者: 中島王彦, 大内正己, 磯部優樹, 播金優一, ZHANG Yechi, 小野宜昭, 梅田滉也, 大栗真宗 

DOI: 10.3847/1538-4365/acd556 

URL: https://iopscience.iop.org/article/10.3847/1538-4365/acd556 

(*) 酸素の存在比は、水素Hに対する酸素Oの個数比(O/H)を意味します。ここで水素は、宇宙誕生時から存在していた元素であるため、基準に使われています。 

図1:研究チームがジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の近赤外線分光器NIRSpecの観測データを解析することで得た122-133億年前の宇宙にある138個の銀河の二次元赤外線スペクトルの一覧。下から上にかけて、より遠くの銀河のスペクトルが表示されています。拡大図は、うち一つの銀河の画像と一次元スペクトルを例として表しています。光っている部分が、水素や酸素などの原子やイオンから放射される輝線です。宇宙膨張の影響により、より遠くの銀河からの輝線ほど長い波長へ(より右側へ)シフトして観測されています。これらの輝線の強さから、酸素などの元素の存在比を調べることができます。 
(クレジット:NASA, ESA, CSA, K. Nakajima et al.) 
図2:酸素の存在比の欠乏が明確に示された131〜133億年前に見つかった6天体の近赤外線画像(JWST/NIRCamによる)。現在から131億年前までの銀河ではこのような欠乏は平均的に見られず、宇宙の最初の5〜7億年において銀河における酸素の存在比が急激に増えたことが示されました。(クレジット:NASA, ESA, CSA, K. Nakajima et al.)