2021.8.23 highlights

超新星残骸において陽子起源ガンマ線の分離測定に初めて成功

佐野栄俊 特任助教/NAOJフェローの研究成果が発表されました。

国立天文台、名古屋大学、アデレード大学の国際研究チームは、超新星残骸で発生した「宇宙線」の陽子・電子成分の定量分離に世界で初めて成功しました。本研究は、ガンマ線望遠鏡 H.E.S.S. によって得られた最新のガンマ線画像と、エックス線および星間ガスの画像を融合し、独自の新しい解析手法を適用したものです。本研究によって超新星残骸 RX J1713.7−3946(以後 RXJ1713)において、宇宙線陽子によるガンマ線の強度が70%を占めることが明らかになり、未解明であった陽子起源ガンマ線が初めて導かれました。この成果は、宇宙線の超新星残骸による加速を決定づけたものであり、「宇宙線の起源解明」における画期的な一歩です。

宇宙において最高エネルギーを持つ粒子「宇宙線」は1912年に発見されて以来、その起源が大きな謎でした。ほぼ光速度で飛び交う「宇宙線」は、銀河系内では超新星爆発にともなって加速されるという説が有力です。最近のガンマ線観測の進展によって多くの超新星残骸でガンマ線が発生していることが分かりました。ガンマ線が「宇宙線」主成分の陽子から発生していれば、「宇宙線」の超新星起源が証明されたことになります。しかし、ガンマ線は陽子の100分の1存在する電子によってもつくられるため、陽子起源と電子起源のどちらが優勢なのか、2つの寄与の割合を測る必要がありますが、これは未解決でした。

本研究ではまず、ガンマ線強度が星間陽子量と共に増加することを確かめ、陽子起源の存在を確認しました。さらに、宇宙線電子量の増加によってもガンマ線強度が増加することを確かめたのです。そこで研究チームは、ガンマ線が2つの起源を合成してつくられているとのスキームによってガンマ線の観測データを解析しました。そのために全ガンマ線強度を陽子起源と電子起源の2つのガンマ線の和として表し、3つの独立な観測量が統一的に理解できることを導いたのです。この手法は本研究で初めて創案されたものです。その結果、陽子起源ガンマ線と電子起源ガンマ線がそれぞれ全ガンマ線の70%と30%を占めることが導かれました。2つの起源が分離されたのは初めてです。これによって、星間陽子の濃い場所で陽子起源が卓越し、薄い場所で電子起源が増加する様子も可視化されて2つの機構が共に働いていることが確実になり、先行する理論研究の予想の正しさも支持されました。本成果によって、「宇宙線」の主成分である陽子成分を起源とするガンマ線の動かぬ証拠が得られ、銀河宇宙線が超新星爆発でつくられていることが決定的になりました。

本成果は Fukui, Sano, Yamane et al. “Pursuing the Origin of the Gamma Rays in RX J1713.7-3946 Quantifying the Hadronic and Leptonic Components” として、2021年7月9日付の天文学術雑誌『アストロフィジカルジャーナル』に掲載されました。

詳しくは、以下をご覧ください。

名古屋大学: https://www.nagoya-u.ac.jp/about-nu/public-relations/researchinfo/upload_images/20210823_sci.pdf