大質量星の爆発である重力崩壊型超新星の中には、周囲に存在するガス(星周物質)との衝突をエネルギー源として輝いているものも存在し、II型超新星やIb型超新星(どちらも超新星のスペクトル分類で、水素の吸収線が見られる超新星と水素が見えないがヘリウムが見られる超新星)のサブカテゴリとしてIIn型超新星やIbn型超新星という分類がなされています。また、近年の突発天体探査でその存在が明らかとなったFast Blue Optical Transients(可視光度曲線の進化のタイムスケールが~10日以内と短く、スペクトルが青い)というカテゴリの天体も、何らかの星の爆発と星周物質の衝突をエネルギー源としているというのが有力な説の一つです。星の進化の最終段階において、そのような星周物質を作り出す過程についてはよく分かっておらず、理論的にも観測的にも活発な研究が続けられています。また、このような天体は、現在稼働中の突発天体探査プロジェクト(Zwicky Transient Facilityなど)や建設中のVera C. Rubin Observatory(掃天観測専用の8.4M可視赤外望遠鏡)によって継続的に探査され、その検出数は飛躍的に増加していくことが予想されます。
科学研究部の鈴木昭宏 特任助教 (国立天文台フェロー)、守屋尭 助教、滝脇智也 助教は星周物質と衝突する超新星エジェクタの球対称1次元輻射流体力学シミュレーションを様々なパラメータ(質量やエネルギー、半径など)で行い、その最大光度や増光時間などの光度曲線を特徴付ける量が星周物質やエジェクタのどのようなパラメータに依存して決まるのかを明らかにしました。上図は増光時間(横軸)と最大光度(縦軸)の平面で、計算したモデルがどのように位置するのかを示したもの(上段)と、観測されたFBOTs(中段)とIIn型超新星(下段)との比較です。左、中央、右パネルは異なるパラメータでの結果を表しています。理論モデルと観測との比較によって、観測される突発天体が星周物質との衝突をエネルギー源として光っている場合にどのような星周物質とエジェクタを仮定すると観測が再現できるのかを推定できます。また、観測される天体の増光時間-最大光度平面での分布の仕方を調べることで、星周物質とエジェクタのパラメータに何らかの関係があるかどうかも調べることができます。今後サンプル数が増加していくことで、星周物質とエジェクタのパラメータの関係性をより詳しく調べられることが期待されます。本結果は、The Astrophysical Journal誌に発表されています。
2020/08/19
Reference:
Suzuki, A., Moriya, T. J., and Takiwaki, T., The Astrophysical Journal, 889, 56 [ADS] [doi]
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