大学院生として一緒に研究する

総合研究大学院大学の大学院生として国立天文台で研究することができます。 詳しくは こちら
参考:国立天文台で研究するには?


研究室の選び方(特に大学3・4年生で既に研究室に所属している方)

研究室を選ぶというのは一般的に大変難しいです。 私自身も大学院入試の際、「理論ならなんでもいいや」くらいで選んでいました(今思うと考えなさすぎだった)。 しかし、本来は研究室に入る前にある程度情報が手に入るはずです。

ここでは一つの参考として、研究室の長や所属メンバーの近年の出版論文を調べることをおすすめします。 天文学では、成果は査読付き論文として発表し、そのリストはADSで検索することができます。 論文として発表していないものは科学的成果とはみなされません。 論文は例えば Tanaka, Sato, and David, ApJ, 2016 などのように、著者を並べたものに出版雑誌と出版年を付記して表します(この場合 Tanaka et al., 2016と略されることが多い)。 天文学の論文は、通常著者リストの最初に来る人(first author)が実質的に論文を書いています。 そのため、その人自身が最近研究をしているかは、最近主著論文(自分がfirst authorの論文)を書いているか、を見れば分かるでしょう。

その研究室に過去に在籍していた人が論文を書けていたかどうかは、過去の在籍者が主著論文を書いていたかを見ればわかります。 この場合、研究を指導した人は2番目以降の著者として名前が入ります。 そのため、行こうと思っている研究室の長が入っている論文リストを眺めてみると、在籍した人が論文を書けていたかがわかります。 試しに、ADSに行って、Authors: のところに"^Kataoka,A"と入力し、下の方にある"All refereed articles"にチェックマークを入れて検索してみてください。 こんな感じで私の最近の主著論文が出てきます。 私の共著論文(2番目以降の著者として入っている論文)を見たい時は、"Kataoka,A"という風に"^"を消して検索してみてください。

日本では学部生の時の所属研究室にそのまま進学する、あるいは修士から博士では所属を変えないことが多いですが、 例えば欧州では修士から博士は通常大学院を(というか国を)変えることが一般的です。 上記を踏まえて、大学院の研究室選びには後悔のないようにしてください。

既に一緒に研究をしている人へ

科学の世界においては、研究指導者や共同研究者との相性が合わないことは頻発します。 私と一緒に研究してもからっきしだめだったけど、違う人と研究を始めたら花開く、というケースも当然たくさんあると思っていますし、それでいいと思っています。

ですので、もし私と研究を一緒にしていて肌に合わないなと感じた場合は、お願いですからその旨どうか私にご相談ください。 「そんなこと相談しづらいわ!」と思うでしょうが、相談していただけば、他の共同研究者の斡旋もできますし、現在の研究についても不必要に課題を増やさず最短の時間で終わらせて次に進めるよう協力することができます。 総研大の中であれば指導教員を変更できますし、そうでなくても実質的に誰か他の人に指導を委託できます(もちろん向こうが了承すればですが)。 その際、新しい共同研究者に対して、学生の不利になるような伝言等はしません。

大学院博士課程として過ごす時間は数年と大変長いです。 この人とはうまくいかないと感じながら数年悶々とすごすのは互いにとって不幸ですので、 共同研究者を変更したいあるいはしたいかもしれない場合は、勇気を持ってご相談ください。

これまでの学生・若手研究者との共同研究の例

彗星の形成過程を探る

彗星は、太陽系に残された微惑星の生き残りであるかもしれない。 本研究は、ダスト集合体の数値計算を行うことで物質強度を求め、彗星の物質強度と比較することでその形成過程を探るものである。 これまでダスト集合体の圧縮強度はよく調べられてきた(Kataoka et al. 2013)。 このような研究を発展させ、引っ張り強度や歪み強度を求め、探査機Rosettaによる探査が行なわれた67Pチュリモフゲラシェメンコ彗星と比較する。 本研究は東京大学/国立天文台の辰馬未沙子さんに率いられている。
Tatsuuma, Kataoka, Tanaka, in prep.

チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星


ダスト付着多体シミュレーション





原始惑星系円盤の高分解能ALMA偏光観測

原始惑星系円盤の偏光観測は今まで考えられていたような磁場によってダストが整列することで起こるのではなく、 ダスト散乱と輻射場による整列の組み合わせであることがわかってきた。 本研究はALMAによって初めて偏光観測が行われてた原始惑星系円盤HD142527(Kataoka et al. 2016)の高分解能(~0.2秒角)観測である。 本研究は理化学研究所の大橋聡さんによって率いられている。
Ohashi, Kataoka, et al., submitted.

原始惑星系円盤HD142527のALMA偏光観測 (Kataoka et al. 2016)


ダストの合体成長理論によるALMA偏光観測予測

This work was lead by Adriana Pohl, a Ph.D. student at Max-Planck Institute of Astronomy (Heidelberg, Germany). It is theoretically pointed out that self-scattering of thermal dust emission in protoplanetary disks can produce a polarized emission (Kataoka et al. 2015). This self-scattering-induced polarization is detectable only when the grain size is ~ (wavelength)/(2pi). She combined the current state-of-the-art grain growth and migration model with the radiative transfer calculations to show if we can detect polarized emission.

"Investigating dust trapping in transition disks with millimeter-wave polarization"
Pohl, A.; Kataoka, A.; Pinilla, P.; Dullemond, C. P.; Henning, Th.; Birnstiel, T.
Astronomy and Astrophysics, 593, A12 (2016)
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