原始惑星の巨大衝突過程における軌道構造の中心星質量依存性
星野 遥 (東大)
要旨:
現在の惑星形成の標準モデルでは、星の誕生と同時に原始惑星系円盤が周囲に形成され、その中のダストが合体・成長を繰り返し、惑星まで成長すると考えられている。1995年以降これまでに約4000個もの系外惑星が発見されているが、太陽系の構造とは違った特徴をもつ惑星系が多く、標準モデルではこれらの特徴を説明できない。円盤の質量や密度分布、惑星の分布の変更など、これまで様々な修正がなされてきたが、中心星の質量については、太陽質量に固定する場合がほとんどであった。中心星の質量を変えた場合、ハビタブルゾーン内に惑星が形成される可能性についての議論(Raymond et al. 2007)が多少あるものの、惑星集積過程にもたらす影響についての詳しい研究は今まで行なわれていない。
そこで本研究では、原始惑星から惑星へと成長する過程において、中心星の質量を系統的に変化させた場合の惑星系の軌道構造への影響を明らかにし、軌道要素の中心星質量依存性を定式化することをめざす。原始惑星は重力散乱により軌道が乱され、巨大衝突を繰り返すことで地球型惑星の大きさにまで成長すると考えられている。惑星系形成の最終段階に着目する本研究は、系外惑星探査の結果と比較することも可能になる。
この巨大衝突過程においてN体シミュレーションを行うために、まずコードの開発を行った。時間積分の方法として、予測子・修正子法の一部である、 4次のエルミート積分法(Kokubo et al. 1998)を実装した。現在、中心星の質量を太陽の0.1/0.2/0.5/1.0倍と変化させてN体シミュレーションを行っている。今後、軌道要素の変化およびその質量依存性について調べていきたい。
今回は、研究手法の紹介、研究経過およびシミュレーションの結果について発表する。
host contact: Misako Tatsuuma