0.事前準備・技術的な補助資料
論文の記述
研究結果は査読論文として世に発表します。他人の研究結果を利用するときは必ず論文への引用をつけます。本講義では下記の通りの省略を用います。
- Kataoka et al. 2019, ApJ, 874, L6
- (ここまで書けば論文は一意に特定されるが、面倒なのでこう書かないことが多い)
- Kataoka et al. 2019
- (上記論文は通常このように省略して表記する)
- Doi and Kataoka 2021
- (著者が3人以上いる場合は [主著者 et al.] とかくが、二人の場合はこのように書く)
- Kataoka et al. 2016a, Kataoka et al. 2016b
- (同じ年に2篇以上ある場合は先に出た論文からa,bと添字をつける。)
分野によりますが、天文系では、主著者がメインで論文を書いている場合が多いです(first author = corresponding author)。 主著者が学生の場合指導教員は2番目に来ることが多いですが、最後が好きな教員もいるようです。 ただし、特にlast authorを重視する文化はありません。
論文の検索方法
天文系では通常ADSという無料サービスを使います。 例えばKataoka et al. 2019 を探すときは検索窓に [author:"^kataoka,a" property:refereed year:2019] と入れて検索してください。
該当論文のページ から該当論文を取得するには以下の通りにして下さい。右上の方にFULL TEXT SOURCESと書いてあります。ここのPublisherという方が公式な論文ページです。ただし、論文によっては有料となっていますが、大学のネットワークを通してこのページを閲覧すると、大学がお金を払ってくれ、学生は料金を払わずに見ることができます。大学のネットワークを利用できるときはこちらを利用してください。一方で、自宅などで有料論文が見れない際は、arXivと書いてある方を使ってください。こちらは、天文・物理・数学の論文を、著者が自分でアップロードしてあるプレプリントサーバーです。出版論文と一部表現が違うことがありますが、ひとまずarXiv版を見て問題はないでしょう。 - 地球惑星系の論文もADSである程度出てきますが、arXivに載せない流儀の分野もあるようです。
単位系・よく使う定数
cgs単位系を用います。教養の授業等はSI単位系だったと思いますが、天文学は慣例的にcgs単位系を用いています。例えば長さの単位はcmですし、重さはgです。
また、天文独自の単位も頻出します。変換がわからないものはグーグルに 例えば「1auをcmで」と聞けば答えてくれます。以下、正確性を大きく欠く大雑把な覚え方です。概算の役に立ちます。正確な数字は各自調べてください。
- 1年は10の7.5乗秒(1e7.5 or 3e7)
- 1太陽質量は2e33g
- 1000木星質量で1太陽質量
- 300地球質量で1木星質量
- 光速は3e10cm/s
- 1auは1.5e13cm
- 1Jyは1e-23 cgs単位系 (Jyはジャンスキー、明るさの単位。)
- 輝度温度変換は面倒なのでNRAOのページを見る
- \(1.36\frac{\lambda^2}{\theta_{maj}\theta_{min}}I\), ただし I [mJy/beam], \(\lambda\) [cm], \(\theta\)秒角。
プログラミングを用いたかんたんな計算
数字を用いた計算は紙でやってもいいのですが、ここではpythonを使ったかんたんな計算法を書いておきます。pythonは適宜インストールした上で自分の端末でpip install astropy
とやっておきます。ここで、condaを利用している人は別途そちらを使ってください。エディター等はなんでもいいのですが(たぶん今はVScodeが人気?)ここでは環境依存を減らすため、jupyter labをおすすめしておきます。pip install jupyterlab
でインストール。そのうえで、下記のように計算ができます。
#astropy というパッケージの中にある定数表をastroconstという名前でimportしておく
from astropy import constants as astroconst
#astroconstの中から木星質量をとってきて、その値をM_pという変数に入れる。単位は常にcgs
M_p=astroconst.M_jup.value
#試しに値を確認してみる
print('The mass of Jupiter is',M_p,' [g]')
The mass of Jupiter is 1.8981245973360505e+27 [g]
こんな感じで使えて便利です。ちなみに、さっき太陽は1000木星とか言ってましたが、本当かどうかは下記のようにすると確かめられるでしょう。
#astropy というパッケージの中にある定数表をastroconstという名前でimportしておく
from astropy import constants as astroconst
#astroconstの中から木星質量をとってきて、その値をM_pという変数に入れる。単位は常にcgs
M_p=astroconst.M_jup.value
#astroconstの中から木星質量をとってきて、その値をM_sという変数に入れる。単位は常にcgs
M_s=astroconst.M_sun.value
#太陽質量と木星質量の比を確認してみる
print(M_s/M_p)
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印刷物に記された数式をTeX形式で起こしたいがだるいと思った経験はないでしょうか。 画像ファイルを読み取ってTeXにしてくれるサービスがあります→ Snip Web。 が、無料版では枚数制限があるのでお気をつけてお使いください。
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