エイドリアン・チャイコフスキー『時の子供たち』(竹書房)
(2024年3月読了)
同著者の"The Doors of Eden"を読んだので、和訳されている作品も見ておこうと思って手に取りました。
遠い未来、宇宙に進出した人類は、とある系外惑星をテラフォームする計画を実行しています。そこにはナノウイルスにより人為的に知性を増進した猿が住み、人間が移住した際に役立ってくれるという計画だったのですが、猿の投入は反対派(Non Ultra Natura、響きがかっこいい)の妨害により失敗してしまいます。散布されたナノウイルスにより代わりに知性を得たのは――蜘蛛だった!
その事件のさらに数千年後、残念ながら地球は滅んでしまうのですが、人類の生き残りを載せた避難船ギルガメシュがこの惑星にやってきます。このテラフォーミングされた惑星が人類の最後の希望というわけですが、ここにはすでに知性蜘蛛が住んでいるので、利害が対立してしまい、さてどうしますか、という話になっていきます。
本作品は明らかに水準以上のファースト・コンタクトSFです。あるいは、人類社会のミラーリングとしての蜘蛛社会(極端な雌尊雄卑社会!)を通したフェミニズムSFであるかもしれないし、ひたすらに人類が愚かな〈人類は愚か〉SFとしても楽しめます。未訳の続編もあるということで、翻訳を期待したいところです。映像化の企画も進んでいるということですが、映像でデカい蜘蛛を見せられるのは若干厳しいかもしれない(蜘蛛が苦手なので……)。
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