高野史緒『グラーフ・ツェッペリン あの夏の飛行船』(早川書房)

(2024年4月読了)

 1929年、ドイツの飛行船グラーフ・ツェッペリン号は世界一周旅行を敢行し、その途中で霞ヶ浦に寄港した。これは史実らしいのだが、本作は霞ヶ浦に着陸する瞬間にグラーフ・ツェッペリン号が爆発・炎上してしまった歴史を描く一種の歴史改変SFである。改変された歴史ではなぜか情報技術や量子論が史実ほどには発達せず、逆に宇宙開発が大躍進を遂げている。そんな変わった歴史が我々の史実の世界が束の間の交錯をするお話であった。
 本作は「SFが読みたい! 2024年版」の国内篇1位を獲得したらしいのだが、個人的にはあまり刺さらなかった気がする。もっと歴史が分岐していく様子を詳しく描写してもらいたかった気もするし、歴史改変の背景として提示される物理理論がかなり怪しかったからかもしれない。

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