酒井隆史『ブルシット・ジョブの謎 クソどうでもいい仕事はなぜ増えるか』(講談社)
(2024年5月読了)
今のところ天文学のポスドクという仕事をやっていますが、いつ業界から去る日が来てもおかしくはないという感覚があり、もし研究以外の職に転職することがあれば何ならできるかなということには時折思いを馳せています。何をやるにしても最低限意義のあることがやりたいと思っており、その一環で本書を手に取ってみました。
ブルシット・ジョブは人類学者のデヴィッド・グレーバーが提唱した概念で、大雑把には「完璧に無意味で、不必要で、有害でさえある雇用の形態」(50頁)です。ここで具体例を挙げてしまうと角が立つのでしませんが、いわゆるエッシェンシャル・ワークの対極にあるようです。本書では、ブルシット・ジョブが増殖していく理由や、ブルシット・ジョブに比べてエッシェンシャル・ワークの待遇がかえって劣悪になってしまうメカニズム(いわゆる道徳羨望の議論)を解き明かしていきます。このあたりは抽象的な経済思想の話になって理解が追い付いていませんが、端的にはネオリベラリズムが悪いということになっているのだと思います。
1930年、経済学者のジョン・メイナード・ケインズは、テクノロジーの進歩により20世紀末の先進国では労働は週15時間で足りることになるだろうと予言したそうです。もちろんこれは盛大に外れてしまったわけですが、本書に言わせれば、これもブルシット・ジョブという無意味な仕事のせいということになります。はやく週15時間労働の世界が来てほしい……。
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