松沢裕作『歴史学はこう考える』(筑摩書房)

(2025年3月読了)

 歴史上の個々の出来事や人物に関する一般向けの書籍は世に山ほど存在する。一方で、そういった歴史上のファクトというものを歴史学者が明らかにしていく手続きというのは、一般的にはあまり知られていないだろう。本書は実在する歴史学の論文の一部分を取り出し、歴史学者が実際にどのように史料を読解しているのかをわかりやすく解説している。そこでは論文中の一文一文がどのような役割を担っているのかがexplicitに説明されており、各分野にこういうテキストがあれば、初めて論文を書く大学院生にも有用なのではないかと思った。
 本書で採用されているような手法(といっていいのか)をエスノメソドロジーというらしいが、その先駆的研究として、天文学者がパルサーを発見した時の録音を用いたものがあるらしい(Garfinkel et al. 1981)。ちょっと読んでみたい。

参考文献
Garfinkel, Lynch, & Livingston (1981), Philosophy of the Social Sciences, 11, 131.

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