池澤夏樹『ワカタケル』(KADOKAWA)
(2025年2月読了)
ワカタケルは埼玉県稲荷山古墳出土の辛亥銘鉄剣の銘文にその名がみられる古墳時代の大王であり、第21代雄略天皇に比定されている。また、『宋書』倭国伝に登場する倭の五王のひとり、倭王武と同一視されることが多い。最初期の天皇はしばしば実在が疑われるが、ワカタケルについては考古学的にも実在したとされているらしい。本作は、ライバルを暗殺した上で天皇に即位し、強いリーダーシップのもとで古代日本を統治したワカタケルが、ついには「かむあがりなされる」までを描いた壮大な歴史小説である。古代史は良くも悪くも史料が少ないため、想像の余地が大きくて夢があるのがよいなと思う。そのうち埼玉まで鉄剣を見に行きたい。
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