安部公房『第四間氷期』(新潮社)

(2024年4月読了)

 読書の幅を広げるために有名な作家の作品を適当に選んで読むということをときたまやっていて、その一環で手に取ってみた。また、本作品は初期の日本SFの本格長編として有名であるというのも選ぶ理由になった。
 本作品が書かれたのは1950年代後半であり、人工知能という言葉が提案されたダートマス会議(1956年)の直後である。このようなAI研究の黎明期に書かれた作品であるにもかかわらず、現在の統計的機械学習技術を彷彿とさせるような描写があり、慧眼を感じた。たとえば、「だから、予言機械を本当に使いこなすためには、むしろ質問者の能力が問題になってくる」(247頁)というセリフは、いわゆるプロンプト・エンジニアリングっぽい……気がする。そもそもこの予言機械というのは社会の動向や自然現象や個人の人格を、十分にデータさえあればなんでも予言できるということになっていて、すごく現代的だと思う。また、ソ連がAI先進国として共産主義の未来を予言する描写で、伴名練『シンギュラリティ・ソヴィエト』のソ連が技術的特異点(テフノロギチェスカヤ・シングリャルノスト)を達成する場面を思い出した(もちろん本作品の方がはるかに早いわけだが)。

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