Short のバックアップ(No.68)

ショートコロキウム2015 †

ショートコロキウムは理論研究部の内部向けのセミナーであり、原則として毎週水曜日の午後13:30から開催しています。

ショートコロキウムの後には理論コロキウムを行います。

Schedule & History †

2010年度 2011年度 2012年度 2013年度 2014年度

日程	発表者	タイトル	場所/時間	備考
4/8	全員	自己紹介	コスモス会館 / 13:30
4/15	野沢貴也	高赤方偏移クェーサー母銀河中の星間ダスト進化と減光曲線	コスモス会館 / 13:30
4/22	古澤峻	中性子星からストレンジクォーク星への燃焼過程	コスモス会館 / 13:30


5/13	朝比奈雄太	Westerlund 2星団方向の分子雲形成シミュレーション	コスモス会館 / 13:30
5/13	祖谷元	中性子星クラスト振動と電子遮蔽効果	コスモス会館 / 14:10
5/20	脇田茂	原始惑星系円盤内の酸素同位体組成分布	コスモス会館 / 13:30
5/27	藤井通子	星団のバリエーションの起源	コスモス会館 / 13:30
6/3	（お休み）	第3回DTAシンポジウム開催のため
6/10	（お休み）	ロングコロキウムを２つ開催するため
6/17	（お休み）	ロングコロキウムを２つ開催するため
6/24	（お休み）	宇宙核物理シンポジウム開催のため
7/1	（お休み）	Star Formation Workshop開催のため
7/8	浜名崇	重力レンズ銀河団計測による宇宙論パラメーター推定	コスモス会館 / 13:30
7/15	磯江麻里	タイトル	コスモス会館 / 13:30
7/22	高橋博之	タイトル	コスモス会館 / 13:30

↑

Abstract †

4/15　野沢貴也(理論部)　高赤方偏移クェーサー母銀河の星間ダスト進化と減光曲線: 赤方偏移が4を超えるクェーサーの減光曲線は、近傍の銀河のものと異なることが知られている。また、このようなクェーサーの母銀河中には大量の星間ダストが存在することも確認されている。これらの観測は、宇宙初期において星間ダストが急速に増加し、またそのダストの性質が現在の宇宙のものとは異なっていることを示唆する。本研究では、ダストのサイズ分布を考慮した星間ダスト進化モデルに基づき、高赤方偏移クェーサーのダスト量と減光曲線の進化について調べた。その結果、クェーサーの母銀河中に密度の高い分子雲が豊富に存在していれば、ダスト上への重元素ガスの降着とダストの合体成長が効率的に起こり、宇宙初期で観測された大量のダストの存在と特異な減光曲線を同時に説明できることを明らかにした。また、このような宇宙初期における炭素質ダストは、グラファイトではなく主に非晶質炭素であることも突き止めた。

4/22　古澤峻(CfCA)　中性子星からストレンジクォーク星への燃焼過程: 超新星爆発後に形成される中性子星は、ストレンジクォーク星に転換する可能性があり、解放されるニュートリノが観測可能であることも期待されている。我々は、１次元定常流におけるハドロンマターからストレンジクォークマターへの転換の過程を、詳細に調べた。本講演では不定性の多いクォーク物質の状態方程式や初期の密度などが、転換過程に与える影響について議論する。

5/13　朝比奈雄太(CfCA)　Westerlund 2星団方向の分子雲形成シミュレーション: Westerlund 2星団方向に直線状に延びた分子雲と円弧状の分子雲が観測されており、それらの分子雲の間にはTeVγ線源が存在している。我々はこれらの分子雲がジェットと星間中性水素ガスの相互作用によって形成されているのではないかと考え、ジェットと星間ガス相互作用シミュレーションを実施した。また、分子雲形状の違いは星間ガスの密度分布の違いが原因であると考え、中性水素ガスのボリュームフィリングファクターを変化させた計算を行った。フィリングファクターが小さい場合にはジェットは中性水素ガスの間を伝播できるので分子雲は広がった構造になった。フィリングファクターが大きい場合にはジェットは中性水素ガスを掃き集め分子雲の形状は円弧状に近づくことを示した。

5/13　祖谷元(理論部)　中性子星クラスト振動と電子遮蔽効果: 中性子星内部は標準核密度を超えるため、地上実験でそのような極限状況下での物性を知ることは非常に困難である。一方、中性子星の振動は内部の情報を反映したものとなるため、振動数から星内部を「見る」ことができるかもしれない。この手法は星震学と呼ばれている。中性子星の振動を直接とらえた観測例はほとんどないが、最近軟ガンマ線リピーターでいくつか準周期的振動数が見つかっている。そこで、我々はこの準周期的振動数を中性子星クラストでの振動と対応させることで、クラストの状態方程式への制限を目指してきた。今回の講演では、特に電子遮蔽の効果を取り入れた解析を行い、その効果がどの程度重要かを議論するとともに、最近新たに見つかった準周期的振動をこれまでと同じ枠組みで説明できるか考える。

5/20　脇田茂(CfCA)　原始惑星系円盤内の酸素同位体組成分布: 地球外物質である隕石の分析結果から、原始太陽系星雲内では酸素同位体比が不均質であった可能性が示唆されている。原始惑星系円盤を観測することでこの起源が明らかになると考えられ、この目的には高分解能を持つALMA望遠鏡が必要である。ALMAによる原始惑星系円盤内での一酸化炭素の観測から、初期太陽系内の酸素同位体組成分布の解明を目指す研究の紹介を行う。

5/27　藤井通子(理論部)　星団のバリエーションの起源: 古典的には星団は散開星団と球状星団の２つに大きく分類されるが、近年の観測から、若い星団にはyoung massive cluster、embedded cluster、leaky clusterといったバリエーションがあることがわかってきた。星団のバリエーションはどのように生まれたのかを明らかにするために、乱流を持つ分子雲を初期条件とする星団形成シミュレーションを行った。その結果、天の川銀河で典型的な分子雲からは古典的な散開星団やOBアソシエーションが形成され、スターバースト銀河で典型的な大質量かつ高密度の分子雲からはyoung massive clusterが形成されることがわかった。

7/8　浜名崇(理論部)　重力レンズ銀河団計測による宇宙論パラメーター推定: 銀河団はその数密度や空間相関が宇宙の初期密度場の情報を保持しているため宇宙論パラメータを探る手段となり、また銀河団中の暗黒物質の密度分布は暗黒物質の性質を探る手がかりとなるなど、宇宙論研究における有用な天体である。従来銀河団は、銀河集中や銀河団中の高温プラズマによるX線放射を用いて探査されてきた。一方、銀河団はその深い重力ポテンシャルにより、比較的強い重力レンズ効果を引き起こす。
本研究では、すばる望遠鏡SuprimeCamによる１１平方度の撮像データを用いて重力レンズ解析を行い暗黒物質密度場を求め、そこから７銀河団を検出した。このデータを用いて、重力レンズ効果による銀河団計測による宇宙論パラメーター推定を世界で初めて行った。またその将来的な有用性を評価した。以上は最近PASJに掲載された論文の報告である。最後に現在進行中のすばる望遠鏡HyperSuprimeCamによる大規模サーベイデータを用いた関連研究の現状を紹介する。