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Short のバックアップ(No.21)


ショートコロキウム2014

ショートコロキウムは理論研究部の内部向けのセミナーであり、原則として毎週水曜日の午後13:30から開催しています。

ショートコロキウムの後には理論コロキウムを行います。

Schedule & History

2010年度 2011年度 2012年度 2013年度

日程発表者タイトル場所/時間備考
4/9全員自己紹介コスモス会館 / 13:30
4/23藤井通子質量関数のある星団のコアコラプス時間輪講室 / 13:30
5/7脇田茂小惑星イトカワの母天体の熱進化 コスモス会館 / 13:30
5/14小林弘ブラックホール球対称降着流:臨界降着率近傍での観測的特徴 コスモス会館 / 13:30
5/21押野翔一多様体補正エルミート積分法 コスモス会館 / 13:30
5/28高橋博之R2MHDコードによる超臨界降着円盤の大局的数値実験とGR-RMHDコード開発 コスモス会館 / 13:30
6/4田中雅臣高頻度突発天体サーベイによるextremely radio-loud AGNの発見 コスモス会館 / 13:30
6/11浜名崇弱い重力レンズ効果で検出された銀河団のX線放射の性質 コスモス会館 / 13:30
6/18滝脇知也超新星爆発の新パラダイム コスモス会館 / 13:30
6/25富阪幸治フィラメント状磁気雲の力学平衡解 コスモス会館 / 13:30
7/2平居悠矮小銀河の化学動力学進化シミュレーションから探るrプロセスの起源天体 コスモス会館 / 13:30
7/9工藤哲洋磁場と乱流が強い分子雲における自己重力収縮コアの形成時間 コスモス会館 / 13:30
7/16小久保英一郎コスモス会館 / 13:30
7/23Benjamin Wuコスモス会館 / 13:30

Abstract

4/23 藤井通子(理論部) 質量関数のある星団のコアコラプス時間
 星団の星に質量関数がある場合、全ての星が等質量の場合と比べ、星団のコアコラプス時間が短くなることが知られている。本研究では、N体シミュレーションと理論から、質量関数を持つ星団のコアコラプス時間がどのように決まっているのかを調べた。その結果、粒子数が多い、または質量関数の質量比が小さい場合、星団のコアコラプス時間は最も重い星が力学的摩擦で星団の中心に沈むタイムスケールとなり、質量に反比例して短くなることがわかった。また、質量比が非常に大きい場合は、実質的に小粒子系と同様な進化をし、コアコラプスという現象が起こらないことがわかった。
5/7 脇田茂(CfCA) 小惑星イトカワの母天体の熱進化
探査機はやぶさが小惑星イトカワから持ち帰った微粒子の観察結果から、それらが経験した温度やその年代などがわかった。そこで、そのような環境を達成するためにはイトカワの母天体はどのような天体であったかを探ることを目的とした研究を行った。数値計算結果からイトカワ母天体のサイズやその形成年代に制約を加える事ができたので、その紹介を行う。
5/14 小林弘(総研大/理論部) ブラックホール球対称降着流:臨界降着率近傍での観測的特徴
ブラックホールの球対称降着流や球対称風において、観測される光球はしばしば球面が念頭に置かれているが、観測者にとって光学的厚さが1になる面は一般には球状にはらず、特に相対論的な流れにおいては、球面から大きくずれることが指摘されている。 この数年にわたり、とくに輻射圧によって光学的に厚い球対称風が吹いている場合について、相対論的光学的厚みをきちんと考慮して、観測的にどのような特徴を示すかを検討した。すると黒体輻射とは大きくずれ、べき乗型スペクトルになることなどを示した。一方、光学的に厚い球対称降着流では、質量降着率が臨界降着率より十分に大きければ、光球面は十分遠方に位置するため、落下速度も小さくあまり大きな違いはみられないと予想された。 しかし、質量降着率が臨界降着率近傍では、見かけの光球面は小さくなり、落下速度も大きくなるので、相対論的効果が強く働いてくると考えられる。 本研究では臨界降着率近傍の球対称降着流に絞って、見かけの光球を計算し、球対称降着流の観測的特徴を調べた結果を報告する。
5/21 押野翔一(CfCA) 多様体補正エルミート積分法
エルミート積分法は惑星形成を含め、衝突系の力学進化を調べるためによく使われている積分法である。しかし、エルミート法はシンプレクティック積分法と異なり、エネルギー誤差が時間に依存して成長してしまうため長時間計算を行う際には誤差が積み上がってしまう問題がある。そこで、エルミート積分法に多様体補正を適用し長時間の計算でも誤差を抑える手法の紹介を行う。
5/28 高橋博之(CfCA) R2MHDコードによる超臨界降着円盤の大局的数値実験とGR-RMHDコード開発
ブラックホール(BH)は恒星質量程度の小さなものから銀河中心に存在するような巨大BHが存在し、どのようにBHが成長したかは未解明である。我々のグループではガス降着による BH成長が可能であるかを調べるためR2MHDコードを用いて大局的数値実験を行った。その結果、BHへの質量降着率に対する古典的な上限(いわゆるエディントン降着率)は存在せず、BHの急成長は可能である事がわかった。ただしこの計算では(i)周りに十分なガスがあること、(ii)一般相対論的効果が無視できる事、という仮定が入っていた。特に後者についてはブラックホールが回転している場合に顕著になる可能性がある。そこで次に我々はR2MHDコードを発展させ、GR-RMHDコードを開発、実装した。こちらの詳細についても報告する。
6/4 田中雅臣(理論部) 高頻度突発天体サーベイによるextremely radio-loud AGNの発見
近年、超新星爆発などを探査するため多くの突発天体サーベイ観測が行われている。その多くは超新星爆発の変動タイムスケールに合わせて、約数日おきに同一視野の観測を行っているため、1日以下のタイムスケールをもつ変動天体の研究は未開拓の領域である。この1日の壁を越えるため、我々は、東京大学木曽観測所のシュミット望遠鏡を用いて高頻度突発天体サーベイを行っている。このサーベイの主な目的は、超新星爆発の衝撃波が星の表面に到達する瞬間(ショックブレイクアウト)を捉えることであるが、高頻度の反復観測を行うことにより様々な天体の短時間変動現象も捉えることができる。本コロキウムでは、このサーベイで偶然発見された短時間変動するAGNについて紹介する。
6/11 浜名崇(理論部) 弱い重力レンズ効果で検出された銀河団のX線放射の性質
すばる重力レンズサーベイによって検出された10個の銀河団のX線フォローアップ観測の結果について報告する。8銀河団については、Chandraによる新たな観測を行い、残りの2銀河団については、ChandraとXMM-Newtonのアーカイブデータを利用した。重力レンズ銀河団のX線光度とX線温度の関係は、X線で検出された銀河団のスケーリング関係と同様であった。一方、X線光度と銀河団質量の関係については食い違いが見られた。この食い違いは、重力レンズによる質量測定のバイアスを考慮すると軽減される。また、X線画像を用いて銀河団の力学構造を推定し、力学構造の違いによるスケーリング関係への影響を検討した結果も報告する。
6/18 滝脇知也(CfCA) 超新星爆発の新パラダイム
これまで超新星の研究者は”現実では爆発している超新星がシミュレーションで爆発しない”という問題の解決を目指してきた。ニュートリノで原始中性子星の外側を加熱するシナリオを考えたとき、星の形を球対称に仮定した1次元シミュレーションでは、超新星は爆発しないのである。 この状況は近年ドラスティックに変わり、多次元シミュレーションにより爆発モデルが得られ始めている。そうしたシミュレーションでは対流や定在降着衝撃波不安定性など、 物質を撹拌する効果が自然に取り入れられ、それらがニュートリノ加熱を促進することで 最終的に爆発が得られることが分かってきた。 しかし、これで超新星の問題は解決というわけではない。多次元シミュレーションでは、ぎりぎり爆発しているため、入力物理のちょっとした違いで、爆発が得られないこともあるのである。 今後は考えうる全ての入力物理をアップデートした多次元シミュレーションを行い、超新星爆発の理論を確定させる必要があるだろう。これが超新星爆発の新パラダイムである。 本セミナーでは、3次元における撹拌的効果の整理と、超新星爆発の解明に向けたロードマップを示したい。
6/25 富阪幸治(理論部) フィラメント状磁気雲の力学平衡解
星間分子雲を形作る基本形態が「フィラメント」であるというパラダイムがハーシェル衛星の観測を通じて形成されるようになった。星間偏光の観測からフィラメントを貫く磁場はフィラメントに垂直であると考えられている。このようなフィラメントのローレンツ力+熱圧力=重力+外圧の釣り合い力学平衡解を調べているが、今回は、磁束に対して質量がどのように分布しているか(mass loading)が平衡解にどう効くのかのを調べた結果を述べる。前回のコロキュームではしょった計算法についても述べる。
7/2 平居悠(東京大/理論部) 矮小銀河の化学動力学進化シミュレーションから探るrプロセスの起源天体
すばる望遠鏡やVLT等の大型望遠鏡を用いた高分散分光観測によって、近年、銀河系及びその周りに存在する矮小銀河中の恒星の重元素組成の詳細が明らかにされつつある。銀河内における重元素の空間分布、頻度分布は、銀河の力学進化に由来する星形成史を反映するはずであり、化学進化と力学進化を同時に計算することによって初めて説明できるものとして、注目され始めている。ここでは、特に超新星爆発や中性子星連星系の合体などの爆発現象で合成されると考えられているrプロセス元素に注目する。最近の元素合成計算によると、ニュートリノ加熱型の超新星爆発では、質量数の大きいrプロセス元素を作るのは難しいことが示唆されている。一方、中性子星連星系の合体では、合体までに一億年程度を要すると、[Fe/H] < -2.5 で高い[Eu/Fe]を持つ星を説明できないという問題が指摘されている。そこで、我々は、N体/Smoothed Particle Hydrodynamics コードに超新星爆発、中性子星合体に伴うエネルギーと重元素のフィードバックの効果を取り入れた化学力学進化モデルを構築して、この問題に取り組んでいる。本コロキウムでは、rプロセス元素の進化を含めた化学力学進化モデルを紹介し、矮小銀河について行った化学力学進化計算の結果について報告する。
7/9 工藤哲洋(理論部) 磁場と乱流が強い分子雲における自己重力収縮コアの形成時間
強い磁場が分子雲にあるとすると、星が形成するまでに要する時間が観測で予想されるよりも長過ぎることが指摘されていた。しかし、その後、分子雲がその内部に(観測されているような)大きな乱流速度を持つ場合、磁場が強くても星の形成時間は短くなる事が数値シミュレーションによって示された。ただし、形成時間が短くなるメカニズムは定量的に説明されてはいなかった。そこで、ここではそのメカニズムについて考察した。その結果、星が形成するまでの時間を内部速度の関数として表す準解析的な概算式を得た。その式(とそれを導出する物理過程)により、おおよそ数値シミュレーションの結果を説明することができた。